不明な点が多かった十社大神の大絵馬額「源平合戦之図」について、最近、少しわかったことがあります。
その作品は、十社大神の宝物殿にある数々の絵馬額の中でも最も大きく、横およそ5メートル20センチ、縦およそ90センチあります。
絵馬額は一般的に、表か裏に奉納者・製作者・時期などが書いてあるのですが、この絵馬は表には何も書いてなく、裏も書かれた形跡は見られませんでした。
しかし最近になり、裏に長年にわたり付着したとみられる埃などを丁寧に取り除いたところ、かすかに文字が読めるようになりました。
そこには、「奉納 御宝前 諸願成就之所 氏子中 寛延二年」と書かれていました。
また、「絵師 福井八之進」とあり、ほかに大工5人の名前が書かれていました。
寛延二年とは、西暦1749年で、江戸時代中期にあたります。
ある絵馬研究者によると、江戸時代には、複数の合戦のハイライトシーンを1枚の絵に巧みに盛り込んだ合戦図が流行ったとのことです。
この絵馬額も、一の谷の鵯越えのような、騎馬が駆け降りる場面があるほか、屋島の合戦とみられる、武将が弓矢で扇を狙う場面が見られます。
5メートル級の絵馬額は、各地の神社などに奉納されている絵馬と比べてもかなり大きく、奉納者の気持ちの強さが感じられます。
裏書によれば、これで奉納から270年余りが経過する大絵馬。末永く大切にしなければなりません。